広島高等裁判所 昭和26年(う)503号 判決
原判決書は罪となるべき事実として起訴状(記訴状とあるは誤記と認める)記載の公訴事実を引用すると記載してあることは所論の通りであるが刑事訴訟規則第二一八条には地方裁判所に於ては判決書には起訴状に記載された公訴事実又は訴因を追加若しくは変更する書面に記載された事実を引用することが出来る旨規定してあり、右の様な規定が為されたのは裁判所は起訴状又は訴因を追加若しくは変更する書面に記載されている訴因に付て審判する職責を有するものであるから、刑事訴訟法第三三五条に依り判決書に示すべさ「罪となるべき事実」も大体起訴状等に訴因として記載されている事実と一致する場合が多い関係上、判決書の簡素化を計る目的で刑事訴訟法第三三五条に依り判決書に示すべき「罪となるべき事実」が起訴状等に訴因として記載されている事実と一致する場合には、判決書に罪となるべき事実として更に訴因と同一の事柄を記載する繁を省き、訴因として記載されて居る事実其のものを判決書に引用することが出来る途を開いたものであるから此の方式に依り訴因として記載されて居る事実を判決書に引用する場合には単に判決書に之を引用する旨を記載すれば足り、所論の様に其の外にその引用した部分の記載を判決書の末尾其の他に添付する必要はないものと解すべきであり、之に依り罪となるべき事実を示さなければならない旨の刑事訴訟法第三三五条の要求を缺除して居るものということは出来ない。従つて原判決書に罪となるべき事実として起訴状記載の公訴事実を引用する旨記載してある以上罪となるべき事実が示してないものということは出来ない。